研究対象としてみたときのマイクロマウス競技


特徴

  • ルールがしっかりと定義されている.評価が容易.
    • 物理的仮定がしっかりしている.各理論の比較を行いやすい.
    • 競技の順位は定量的に決まるため,提案法の評価を行いやすい.
  • 計測・制御に対する非線形制御理論はまだまだフロンティア
    • マイコンでの実装のために,ローコストな理論が必要
    • 自己位置推定法が必要
    • 最適制御理論が必要
  • 応用先は多岐にわたる
    • 惑星探査
    • 飛行機事故によるレコーダーの回収
    • 無人倉庫の制御
    • ITS(高度道路交通システム)

意義

  • マイクロマウスの開発によって,モデルベースドアプローチでの知的ロボットの開発に貢献する

(ちょっと微妙.もうちょいいい感じの意義があると思う.)

理由

つくばチャレンジでは,
「人々が生活している空間の中で、ロボットが確実に自律的に動き回って働くための技術を追求すること」を目的としている.
そして,この目的の達成を持って,人とロボットとの融和社会を作ろうとしている.
つくばチャレンジは,環境が未知であっても,与えられた目的を達成できるロボットを作ることを発揮している.
環境の不確かさは,明らかにマイクロマウスより高く,やらねばならぬことも多い.
学問というものは,応用ができなければ意味がない.
研究のための研究であってはならない.そのため,実環境で動かなければあまり意味がないという発想のもとで,
つくばチャレンジは作られたのではないだろうか.
一見,つくばチャレンジは,マイクロマウスの完全上位互換競技に見える.
本当にそうなのか?

ところが,つくばチャレンジは環境が不確かであるゆえに,考慮しなければならない事項が多い.
そのため,積載するプロセッサは高速なものになりがちで,
ノートPC程度の計算機をつまなければ事実上参加は不可能である.
そのため,ノートPC程度の計算資源を想定した理論が構成されることになる.

ロボットと人が「生活面」で融和するためにはこれで十分であるし,むしろこの理論が絶対的に必要であろう.
では,「産業面」での融和を考えるとどうだろうか.
産業面においては,必要最小限のコスト(開発コスト,製作コスト)で最大限の効用を発揮することが重要である.
どんな環境でも対応可能なロボットは単に高コストになるだけで不要なのである.
「この用件とこの用件は満たしてほしい」という用件を必要十分に満たすことが,
製作・開発の効率化に寄与する.

たとえば,機械公差という概念を考えてみよう.
5マイクロミリメートルの精度で何でもかんでも加工すれば,
設計はきわめて楽だし,大変高性能な機構を作成することが出来る.
しかし,それでは加工が極めて大変であり,一般家庭に普及させるお値段で大量に供給できない.
幾何公差や,はめあいという概念は,
「この条件を満たしていれば,どんなに手抜きな加工をしてもOK」
という発想で,作られており,これにより製造の効率化を行うことが出来ている.

このように,「産業面」でのロボットと人との融和を考えると,

  • 与えられた条件・目的のもとでは,この条件さえ満たせば大丈夫

という,要求スペックの必要十分条件を求めることが重要なのではないだろうか.

一般に,精密な地図を作ることはきわめて大変である.
しかしながら,環境がある一定の条件を満たしていれば,
自動でロボットがその環境の地図を作り,その環境内で作業を出来ればこれは大変にすばらしいことであろう.
産業ロボットの提供側は,想定された環境下で目的を満たすために必要な最低限の開発を行う.
買う側は,自分がロボットを働かせる環境を,要求スペックが整うように整備すれば,
自社の地図を作る必要なく,(ロボットの提供側に提出する必要がない,秘密保持にもつながる)
購入してきたロボットが何の調整も必要なく,ボタンひとつで動作してくれたら何と便利なことだろう.

このような利用目的を考えると,マイクロマウスは大変有用な研究対象であることが分かる.
迷路という規格がしっかりと定義された空間で,
その環境(迷路の構造・最短経路)を理解し,
与えられた目的(スタートからゴールまでの最速走行)を行う.
まさに,自律ロボットの産業界への進出において,格好のモデルケースと言えるのではないだろうか.

  • 条件が完全に定義されている空間で,目的を達するに必要十分なロボットを安価に作ること

ここでいう安価とは,単にロボットを作るために必要なお金という意味もあるが,
ロボットを作るためにかかった手間も含まれている.
マイクロマウスの上位陣は,膨大なパラメータ調整の手間を軽減するために,
チューニング用のソフトを別途つくり,開発期間の短縮を行っている.
(「自分はロボットを作るために2~3年かかっているのに,何故上位層は1年で機体からソフトまで完成度が高い状態まで持っていけるんだろう」と疑問に思ったことはありませんか?)
一定レベルまで到達するために必要な「コスト」が安価になれば,
当然それ以上のレベルに挑戦するためのゆとりが生まれ,さらなる優秀なロボットが生まれる.
そのため,毎年マイクロマウスロボットはどんどんすばやくなっているのではないだろうか.

  • いかに,人・モノ・金というコストをかけずにゴールまで到着できるロボットを作れるか.

ここにマイクロマウスの真の価値がある.

マイクロマウスにおける研究とは,いかにパラメータチューニングなしに,
開発の手間をかけずに,目的を達成する理論を作るかということにある.