森永式発光回路の解析


森永はマイクロマウス競技入門者のために,標準的なマイクロマウスの解説を行った.本稿では,そこで提案されているセンサーの発行回路の解析を行う.

森永式発光回路

森永のWEBページで公開されているBASICマウスのセンサー回路図は,以下のような発光回路が組み込まれている.
Ledkairo

TLN233は発光LEDである.この回路は,壁に対してこのLEDを発光させ,反射光の強さを測定することで,壁までの距離を測定することを想定している.LED1部分はマイコンへの足へつなぐことを想定された記号であり,ここの論理レベルを設定することで,発光回路を制御する.TD62103Pはスイッチの役目を果たしており,この回路はLED1部分にhighレベル論理を加えた場合,TLN233のカソード側がGNDに直結状態に,LOWレベル論理の場合はハイインピーダンス状態となる.

これらが理想的であると仮定すると,この回路はLED1部分にhighレベル論理を加えた場合以下の右図と等価,LOWレベルの場合は左図と等価とみなせる.
Ledkairo2

右回路はコンデンサからLEDに対して放電でがなされている.コンデンサーの電荷がなくなるか,LED1部分の論理をかえないかぎり,放電は続けられる.コンデンサとTLN233の間には抵抗がはさまっていないため,極めて強い発光が行われる.流れる電流量は,TLN233が連続稼働可能な電流量を超える可能性が高く,計測が終了したらただちに発光を終了する必要がある.

左回路は充電で回路であり,光を発するためにコンデンサーに電荷をためこむ.ここで,どの程度の充電時間をかける必要があるのかを解析しよう.

充電の解析

初期条件として,時間t=0\displaystyleにおいてコンデンサーにたまっている電荷q=0\displaystyleとする.この時,コンデンサの両辺にかかっている電圧V_C(t)\displaystyleを求める.

抵抗値をR\displaystyle,抵抗の両辺にかかっている電圧をV_R(t)\displaystyle,抵抗に流れる電流をi(t)\displaystyle
電源Vccの起電力V_E\displaystyle,コンデンサの容量をC\displaystyle,コンデンサにためこまれた電荷をq(t)\displaystyle
とする.V_E,C,R\displaystyleは時刻によらず一定であると仮定すると,

(1)    \begin{align*} V_R(t)&=Ri(t)\\ V_C(t)&=\frac{q(t)}{C}\\ V_E   &=V_C(t)+V_R(t)\\ i(t)  &=\frac{dq(t)}{dt} \end{align*}

が成立する.
C\displaystyleは定数であることに注意しながらこれらを整理して,

(2)    \begin{align*} &\frac{R}{C}\frac{dV_C(t)}{dt}+V_C(t)=V_E\\ &V_c(0)=\frac{q(0)}{C}=0 \end{align*}

が成立する.このようにして,定数係数1階線形微分方程式に帰着することができた.これを解くと,

(3)    \begin{align*} V_c(t)=V_E(1-e^{-\frac{t}{CR}}) \end{align*}

すなわち,電源電圧V_E\displaystyle,コンデンサ容量C\displaystyle,抵抗値R\displaystyleの値を調整することで,コンデンサに対する充電速度を調整可能であることが分かる.

任意の強度での発光可能性

V_c(t)=V_E(1-e^{-\frac{t}{CR}})\displaystyleより,どんなに時間をかけてもV_c(t)=V_E\displaystyleとはならない.そのため,実用上は一定の値(例えば99%)を超えたら充電可能とすることが妥当である.例えば,R=100[\Omega],C=100[uF]=100\cdot10^{-6}[F]\displaystyleとすると,

V_c(t)=V_E(1-e^{-100t})\displaystyle

であるため,V_c(t)=0.99V_E\displaystyleとなるには,46[msec]の時間がかかることが分かる.安全を見て,機体の電源を入れてから100[msec]くらいはコンデンサへの充電を行う必要があることが分かる.あるいは,コンデンサを放電しきるほど長時間LTN233を発光させた場合も,100[msec]程度は充電を行う必要があることが分かる.

逆にいえば,例えば6.9[msec]だけ充電をすればV_c(t)=0.5V_E\displaystyleとなるため,普段の50%の強さで発光することができる.これは,機体と壁が近すぎて受光側の測定値が飽和してしまう場合に有効である.

安全性

もし仮に(ソフトウェアのバグなどで),回路が長時間発光状態となったとしても,コンデンサに蓄えられた電荷を放出しきった段階で発光は停止する.LEDを破壊できる程度のエネルギーを持てないようにコンデンサの容量を設定すれば,この回路はLEDを破壊する恐れがない安全なものであると言える.また,この回路がひきこむ電流量は,最大でも\frac{V_E}{R}\displaystyleである.そのため,電源回路の電圧降下を引き起こしにくい利点がある.

エネルギー効率

Vccが行った仕事CV_E^2\displaystyleは,コンデンサへ貯めたエネルギー\frac{1}{2}CV_E^2\displaystyleと抵抗が発した熱エネルギー\frac{1}{2}CV_E^2\displaystyleに使われる.そのため,この回路は発光のために使われるエネルギーの倍のエネルギーをVccから奪う回路であることが分かる.このように,この回路はTLN233を破壊しないという意味で安全であるが,エネルギー効率は良くない.

参考文献

外部リンク