DCモータのモデル化と制御


モータのモデル化

DCモータのモデル化・PWM制御についてまとめる.

電気系のモデル

モータの電気系において,以下のような関係式が成立する.

(1)    \begin{align*} e&=Ri+L\dot{i}+K_E\omega\\ \tau&=K_Mi \end{align*}

ただし,

  • \omega[rad/sec]\displaystyle:回転角速度
  • \tau[Nm]\displaystyle:出力トルク
  • e[V]\displaystyle:入力電圧
  • i[A]\displaystyle:電流
  • L[H]\displaystyle:ロータインダクタンス
  • R[\Omega]\displaystyle:端子間抵抗
  • K_M[Nm/A]\displaystyle:トルク係数
  • K_E[V/(rad/s)]\displaystyle:逆起電力定数

モデルの簡便化(必要な制御周期とモデルの関係)

モデル化式より,トルクを制御することは電流を制御することに他ならないことがわかる.第一式を見ると,左辺は入力電圧であり,制御入力であるから自由に設定できる(ということにしておく).右辺第1項は電流値と抵抗の掛け算であるから,第2項・第3項が測定できる量であれば即座に任意のトルクを出力できることを意味している.右辺第3項はモーターのエンコーダから計測できる量と定数の掛け算である.よって,右辺第2項L\dot{i}が測定できれば自由にトルクを出力できる.あるいは,入力電圧を設定して十分時間が経過すれば,電流値は定常値となるため,第2項は無視できる.

そこで,この「十分な時間」はどの程度か見積もってみよう.たとえば,micromo社の1717006SRは以下のようなスペックである.

(2)    \begin{align*} L&=65*10^{-6}[H]\\ R&=4.3[\Omega]\\ K_M&=3.96\times 10^{-3}<a href="" target="_blank">10^{-3}[Nm/A</a>\\ K_E&=0.414\times 10^{-3}\times \frac{2\pi}{60}<a href="" target="_blank">10^{-3}\times \frac{2\pi}{60}[rad/(rad/s)</a> \end{align*}

モデル式を変形・定数値を代入すると,

(3)    \begin{align*} \dot{i}&=-\frac{R}{L}i+\frac{e}{L}-\frac{K_E\omega}{L}\\ [crayon-595354bcd2470616643482/] \end{align*}

となる.

常に,入力電圧e\displaystyleに逆起電力分K_E\omega\displaystyleのバイアスをかけ,逆起電力をキャンセルするような制御をすることにすると,十分な時間をもって,電流を定常値に収束させるために関係する項は-66.153*10^{3}i\displaystyle部分のみとなる.電気的時定数(初期値からその37%まで減衰するまでの時間)は1/(66.153*10^{3})[sec]=15.12[usec]\displaystyleである.

よって,L\dot{i}\displaystyle項を考慮した制御をするためには,マイクロ秒オーダーの制御周期設定が必要である.そのため,モータドライバ回路はディスクリートで組もうなどと思わず,メーカー製の電流ドライバ使うことが賢明である.

以上より,ミリ秒オーダーの制御をする場合においては,以下のようにモータの電気系はモデル化して構わないことが分かった.

(4)    \begin{align*} e&=\frac{R}{K_M}\tau+K_E\omega\\ \end{align*}

もちろん,このようなモデルの簡便化は,物理的な観点からは間違いである.しかし,制御の観点でいえば,採用する制御法によっては,制御対象のモデル化を簡便化しても問題ないことがわかる.すなわち,数学的な理論の整合性と物理モデルの妥当性のバランスが制御屋の腕の見せ所といえる.一応,本稿では出来るだけ簡便化しないモデル化を採用して議論を進める.

機械系のモデル

以下のようにモータの電気系・機械系はモデル化される.

(5)    \begin{align*} e          =&Ri+L\dot{i}+K_E\omega\\ \tau       =&K_Mi=J\dot{\omega}+B\omega+M_Rsgn(\omega)\\ sgn(\omega):=&\left\{ \begin{array}{l} -1(\omega<0)\\ [crayon-595354bcd24cf835998231/] \end{array} \right. \end{align*}

ただし,前節で述べた定数に加え,

  • M_R[Nm]\displaystyle:摩擦トルク
  • J[Nm]\displaystyle:ロータの慣性モーメント
  • B\displaystyle:モータの粘性減衰抵抗

とする.